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桜は日本文化において特別な存在であり、春になると多くの人々が楽しむ「お花見」という伝統があります。お花見は私たちの生活に根付いた行事ですが、その始まりや背景について詳しく知っている人は意外に少ないかもしれません。「お花見に込められた意味は何か?」「お花見はいつから行われているのか?」「その起源や歴史は?」そしてなど、知られざる事実が多いのです。この記事では、お花見をより深く楽しむために、お花見の歴史と由来、代表的な桜の種類、花見のマナーについて詳しく解説いたします。
お花見の歴史や由来について
花見の習慣は、奈良時代に始まり、年月が経つにつれてますます多くの人々に広まっていきました。
奈良時代:お花見は梅を楽しむのが一般的!!
現在、私たちが楽しむお花見のルーツは、奈良時代に上流社会で行われていた習慣に由来するとされています。その時代の貴族たちは、自然の美しさを詠むことに情熱を傾けており、中国から伝わった梅の花を愛でることが一つの娯楽でした。この時代に行われていたお花見は、現在のように桜ではなく、梅や萩など他の花を楽しむことが一般的でした。
平安時代:お花見は、梅から桜に移り代わる!!
平安時代に入ると、お花見の主役は梅から桜に移り変わりました。最も古い桜のお花見の記録は、嵯峨天皇が開催した「花宴之節」として知られています。この行事は、812年に京都の神泉苑で行われたことが「日本後記」に記されています。また、古今和歌集には桜を題材にした数多くの和歌が収められており、源氏物語にも桜の下での宴の様子が描かれています。これらから、桜がどれほど日本人に愛されているかが伺えます。
鎌倉・室町時代:お花見の習慣が貴族から武士へ広まる!!
お花見で楽しめる代表的な桜の種類は?
日本国内には、600種類以上の桜が存在すると言われています。これらは桜の名所や公園だけでなく、個人の庭などでも広く観賞されています。日本で見られる代表的な桜を紹介いたします。
ソメイヨシノ(染井吉野)
ソメイヨシノ
染井吉野(ソメイヨシノ)は、その起源が明確にされていないのが現状です。江戸時代の中頃、現在の東京都豊島区駒込にあった染井村の植木屋たちが市場に出した「吉野桜」が、この桜の始まりとされています。この名前は、桜の名所として知られる奈良県の吉野山にちなんで名付けられたと思われますが、後の研究で、吉野山に自生する桜の多くが日本固有の「ヤマザクラ」であり、吉野桜とは異なることが判明しました。この発見により、1900年に染井村で販売されていた吉野桜は「ソメイヨシノ」と命名されました。
樹高は、約10~15メートルに達し、成長するにつれて横方向に広がる傘形の姿になります。年を経ると、太く強い幹が地面から横に向かって広がり、独特の形状を作り出します。花は主に3月~4月にかけて咲き、特に九州や四国、東京地域では3月の終わりごろに開花が始まります。花びらは5枚で、葉が現れる前に花が咲き、やがて満開になります。蕾の時は赤みが強いですが、開花が進むにつれて淡いピンク色に変わり、最終的には、ほぼ白色に近い色合いになります。
山桜(マザクラ)
山桜
山桜(ヤマザクラ)は、バラ科のサクラ属に属する落葉性の高木で、日本原産の種です。日本に自然に生息するサクラ属の約10~11種類のうちの基本的な野生種の一つであり、山間部に自然に生育するサクラの総称としても「ヤマザクラ」と呼ばれています。
樹高は、15~25メートルに達し、傘状の樹形をしています。エドヒガンに次ぐ長寿種であり、芽が出てから花が咲くまでには時間がかかります。最短で5年、長い場合は10年以上かかることもあり、寒い地域ではさらに開花が遅れることがあります。
開花期は3月下旬~4月中旬にかけてで、赤みを帯びた新芽が芽吹くのと同時に花が咲きます。花は中輪で、直径は約25~35ミリメートル。花弁は5枚で単独で咲き、色は白から淡いピンク色です。
八重桜(ヤエザクラ)
ヤエザクラ
八重桜(ヤエザクラ)は、特定の桜の品種を指すわけではなく、八重咲の花弁を持つ桜の総称です。一般的な桜、例えばソメイヨシノのような種類は、花弁が5枚で、これを一重咲きと称します。しかし、桜の中には6枚以上の花弁を持つものがあり、これらを八重咲きの八重桜として分類しています。
八重桜は、一般的なソメイヨシノよりも開花が遅れる傾向にあり、ソメイヨシノの花が散る頃に咲き始めることが多いです。特に関東や関西地方では、4月の中旬が見頃とされています。八重桜は開花から花が散るまでの期間が長いことが特徴で、花自体も大きく、花弁が多いために丸みを帯びたふっくらとした形状をしています。
河津桜(カワヅザクラ)
河津桜
河津桜(カワヅザクラ)は、バラ科サクラ属に属する日本原産のサクラで、オオシマザクラとカンヒザクラの自然な交配によって生まれた栽培品種です。この桜は亜高木で、傘状の樹形をしています。花は一重咲きで、直径4~5cmの大きな花を咲かせ、花弁は紫紅色をしています。
河津桜は、オオシマザクラとカンヒザクラの雑種に、さらにカンヒザクラが交配されたもので、オオシマザクラ由来の大きな花と、カンヒザクラ由来の紫紅色の花弁と早咲きの特性を持っています。東京では、通常2月~3月上旬にかけて開花を迎えますが、年によっては12月に開花することもあります。
枝垂桜(シダレザクラ)
枝垂桜
枝垂桜(シダレザクラ)は、一般的に枝が柔らかく垂れ下がる特徴を持つサクラの総称です。この中には、野生のエドヒガンから派生した栽培品種である狭義のシダレザクラや、ベニシダレ、ヤエベニシダレなどが含まれており、これらは特に有名です。枝垂桜の木は高木で、高さは8メートル以上に成長することがあります。花は一重咲きの小輪で、淡い紅色をしており、東京での主な花期は3月中旬です。
彼岸桜(ヒガンザクラ)
彼岸桜
彼岸桜(ヒガンザクラ)は、本州の中部から西部に広く分布する小さなバラ科の桜です。これは、カンザクラに次いで春の彼岸の時期(約3月20日前後)に咲く桜の一種で、その名前はこの特徴に由来します。
彼岸桜の花は、葉が出る前の3月下旬~4月上旬にかけて咲きます。この木の高さは、約4メートル~6メートルで、花はソメイヨシノよりもやや小さく、直径は約2〜3センチです。淡いピンクまたは紅白の花が2〜3輪ずつ枝から垂れ下がっています。
お花見のマナーについて
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お花見を楽しむ際には、桜の木をはじめとする周囲の環境や、他のお花見を楽しむ人々に配慮することが重要です。これから訪れる人々も含め、全員が快適に過ごせるように、適切なマナーを心掛けることが大切です。
お花見のマナー1:桜には絶対触らない
桜の木は非常にデリケートで、小さな傷が木にとって大きな影響を与えることがあります。美しい桜を間近で見たい気持ちは理解できますが、枝を折る行為や、写真撮影のために枝を引っ張ることは絶対に避けるべきです。
また、場所取りのために紐をかけたり、木の幹に体重をかけたりするのも適切ではありません。子供たちにも、桜の木に触れたり、その近くで遊んだりしないように教えておくことが大切です。
お花見のマナー2:他の人に配慮して場所取りを行う
桜を間近で楽しみたいと思うのは当然で、そのために良い場所を求めるのも理解できます。ただし、お花見を楽しみたい人は他にも多くいますので、必要以上に広いスペースを確保したり、他人のスペースに無理に入ることは避けましょう。他の参加者を思いやることも、お花見の際に重要なマナーの一つです。
お花見のマナー3:ゴミは必ず持ち帰る
お花見に持参した物は、ゴミを含めて全て自分で持ち帰ることが礼儀です。公共のゴミ箱に捨てるのは避けましょう。自分たちが出したゴミを自分で持ち帰る姿を子供たちに見せることで、お花見だけでなく、日常生活においても「ゴミは自分で持ち帰る」という習慣を教えることができます。お弁当や持ち物を用意する際には、帰りにゴミを持ち帰ることも考慮に入れておくと良いでしょう。
まとめ
お花見の歴史と由来、代表的な桜の種類、花見のマナーについて解説いたしました。
お花見は、奈良時代に花鳥風月を愛でる習慣から始まったとされる伝統的な行事です。この行事は、初めは上流階級の間で行われていましたが、時が経つにつれて一般の人々にも広まっていきました。お花見で楽しむ桜には様々な品種があり、それぞれの場所で異なる桜の美しさを楽しむことができます。
お花見をする際には、桜を大切に扱い、周囲の人々への配慮を忘れず、ゴミは持ち帰るなどのマナーを守ることが重要です。家族や友人と共に、マナーを守りながら楽しい時間を過ごし、素敵な思い出を作りましょう。
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